観光案内所設立プロジェクト~公務員なのにこんな仕事するの?~

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その2「巨大プロジェクト」

 課長は最近打ち合わせの時に、課内の切れ者の若手職員A氏を同席させるようになった。視察も一緒に行かせているようである。課長一人では負いきれず、そろそろ右腕が欲しくなったのだろう。もし事業の全容が見えてきたら、A氏を担当者に据えるつもりなのだろうか。観光課には役所歴30年近いベテラン係長がいたが、この件については完全にスルーの状態で、係長も巻き込まれるのを意図的に避けているようであった。

 2月末頃、観光課職員を全員呼んで1枚のペーパーが配布された。何やら施設の区画を割り振った平面図のようだが、とにかく粗すぎてお絵描きに近い

 そして課長から衝撃の事実が公表された。「区として●●駅の構内に観光案内所(以下:案内所)を設立することになった。そして、観光課が担当部署に決まった。いま配布したのは、案内所のイメージである」と。

 何を言っているのかさっぱり分からなかった。まず、●●駅は観光客なんておらず、案内所の必要性は皆無である。また、観光課はイベント事業の経験は豊富にあるが、施設を作った経験などない

 他にも数えきれないほど突っ込みたいポイントはあったが、到底現実的な話ではない。隣に座っていた係長の細い目が吊り上がっている。怒っているときの顔色である。内心「馬鹿じゃないのか」と考えているのが手に取るように伝わってきた。

 課長から補足説明があり、「●●駅の構内利用は、まちづくり部が電鉄との交渉を担ってきた。このスペースの利用について全庁的に議論して、様々な選択肢が挙げられたが最終的に案内所に決まった」とのことであった。

 私は心の中で「またこのパターンか‥」と深いため息をついた。課長はこの件に巻き込まれ、スペースの利用を検討する会議に呼び出されていたのだ。そして、最終的に観光案内所になり、「”観光”なら観光課がやってね」という帰結になっのだろう。

 ふざけた話である。全庁的な協力の確約は得ているとのことだが、これは響きのいい真っ赤な嘘である。完全な観光課への丸投げだ。区役所あるあるで、「連携」して進めると言っても、あくまで全責任は担当部署(予算をつける部署)なので、他部署は外様で「まあ、何かあったら力を貸すよ」程度なのである。まあ、課長もその辺は分かって言っていただろう。

 案内所は1年半後にオープンさせないといけないとのことだが、実行体制も事務スケジュールも何もない、全てゼロからのスタートである。2月のこんな時期なので、当然予算も取っていない。もっとも予算をつけるにあたり何が必要なのかも見えていないが‥。

 観光課職員から課長に対して、「無理だ、案内所なんて不要である」と避難の嵐であったが、課長は「もう決定事項である」の一点張りであった。私も区役所歴が長かったので大体の内情は推測できる。庁内での検討過程で案内所が候補にあがり、誰かが区長に案内所が適していると進言したのだろう。区長は観光推進に注力しているため、区長から「案内所をつくりたい」という言質を取り、課長に全てを押し付けたのだろう。

 これは私が区役所で一番よくないと思っていたことの一つで、「区長が●●言っていたから、これをやります」という安易な結論である。深い議論を省略し、”区長が言っていたから”で済ますのである。

 ここで課長の欠点が出てしまった。普通は「課として実績がないため、執行体制をきちんと築いてからでないと責任を持てない」と頑として主張すべきだが、課長は「分かりました。引き受けます」と安易に引き取ってしまうのである。現時点で観光課内の担当者は未定であるとのこと。私は心の中で、「そのまま課長とA氏でやってくれ」と切に願っていた

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