(8)区役所の研修と人材育成

その他

■公務員の能力は高いが‥

 私は15年以上公務員として働きましたが、総じて公務員の職務遂行の能力は高いと感じていました。近年、競争率が下がっているとはいえ、新卒採用職員は難関の筆記試験をパスしているので、基本的な学力は身に着けています。また、全般的に素直な性格(時々変人もいますが)で、こだわりを持たずに仕事をスイスイ覚えていくように見えました。一昔前の仕事しないおじさんとは違い、若者は優秀です。対人能力も高く、特にコミュニケーションスキルは民間にでも十分通用すると思います。
 その一方で、公務員が苦手なスキルもあります。特にデータを収集・分析し、目的を達成するために何を・どうやって行うのか企画する「政策形成」を苦手とする職員が多いようでした。その傾向は管理職に強く、客観的な根拠に基づくものではない、思い付き、そして終着図のない意味のない事業に陥るパターンを何度も見てきました。
 区役所は伝統的に変化を好まない風潮が強いことに加え、職員もマーケティング的な思想を身に着ける機会が少ないこともあり、今後「政策形成能力」に長けた職員の重要性はますます高まると思います。

■皆で教えあうOJTの文化

 区役所は戸籍・課税・子育て支援・街づくり・産業政策・地域振興など、様々な部署があり、部署によって業務内容も大きく異なります。そのため、異動するたびに一から新しいことを学びなおすなければなりません。
 では、どうやって新たなスキルを身に着けるのか?情報システム系など、職場を離れて徹底的に専門的学習を行う部署もありますが、業務で必要なスキルの大半は職場内で教えあうOJTを通して学ぶことになります。
 公務員あるあると言ってよいと思いますが、「とりあえずやってみよう」・「やってみて分からなかったら聞いてね」の風潮が強く、最初は戸惑うことがあるかと思います(特に民間からの転職者は)。それでも、職場全体で丁寧に新人・異動者に知識を積んでもらおうという文化は各職場にあり、「仕事はOJT中心でやりながら覚える」という心構えを持ち、謙虚な姿勢で自分から積極的に取り組んでいけば、周りも自然とサポートしてくれると思います。

■区主催の研修は儀式的な意味合いが強い

 では区役所の研修体系(この場合、職場外で受ける研修)はどうなっているかというと、かなり体系化されています。というのも、区長は年度ごとに「研修計画」を定めることになっており、「いつ・どこで・どんな研修」を実施するのかを、年度開始前に決める必要があるためです(研修計画は主に人事の人材育成セクションが担当)。
 次に研修の対象は、役職や年次ごとに受けることが多いです。新人研修、5年目研修、主任研修、係長研修、管理職研修といった感じです。では内容もさぞかし立派なものか‥、と言いたいところですが、残念ながら研修は儀式的な意味合いが強く、私は「受けてみて良かった!!」と思える研修には出会えませんでした。というのも研修カリキュラムが、区長からの(ありがたい)お言葉や、各セクションの課長級からの区政策の説明など、だらだらと話すだけで、正直退屈なものばかりでした。
 区主催の研修では、自身の成長は期待できそうにない。さて、どうやって社会人としてのスキルを磨いていけばよいのか‥。

■結局のところ自助努力

 繰り返しになりますが、業務で使う知識・スキルはOJTを通して、身に着けることは可能です。ただ、これが区役所の外でも役に立つスキルかと言うと疑問が残ります。結局のところ、語学、ICTスキル、プレゼン、マーケティングといった外部でも使えるスキルはどうやって身に着けるのか。それは自分でやるしかありません。また、私が問題と感じていたのは、上司・職場前全体で、職員のスキルアップのために、研修等に積極的に送り出すような空気はありません。このように切磋琢磨しながら自分自身を高めていく環境にないため、「仕事は回るし、別にいいや」と自己啓発の意欲がさらに減退する負の連鎖に陥っていきます。
 でも、人生何があるか分かりません。区役所が嫌になり、転職時に私を助けたのは、地道に続けていた語学勉強のおかげでした。皆さんが区役所カラーに染まらず、少し周りと違う能力を身に着けることを強く期待します。

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