
ケース記録は生活保護受給世帯ごとに作成され、担当職員が面接や家庭訪問調査などを通じて入手した情報を記載します。今回はこのケース記録についてお話しします。
■ケース記録って何?
ケース記録は、立派な公文書として位置づけられています。そして、その記録には、その人(家族の)人生全てが描かれています。具体的には、
<生活保護開始前>
〇家族構成(遠戚も含め、詳細に調査する)
〇生活保護受給に至った経緯
〇現在の経済状況(所持金・資産・負債)
〇生活保護受給者の健康状況(特に疾病を理由として保護受給となった場合)
<生活保護開始後> ※保護開始後は時系列で記載
〇保護費支給額
〇家庭訪問調査や面接で入手した情報
〇支援方針(これまでの経緯を基に、年度末に次年度の支援方針を作成)
上記のとおり、ケース記録には、持病、職歴、生活保護受給後の記録など、これまでに把握してきた全てのことが記録されます。つまり究極の個人情報というわけで、絶対に外部に漏らしてはなりません(話のネタにしたくなるが‥)。
紛失したら最後です。必ずニュースになり、区長は謝罪を迫られるでしょう。もちろん、メモ用のノートもなくしてはなりません。当時大卒上がりの新入職員の私でしたが、個人情報の取り扱いには本当に気を使いました。なお、当時はケース記録をもって家庭訪問調査をする人もいたので、怖いなと思いながら見ていました。
■人生色々‥壮絶な人生の記録
繰り返しになりますが、ケース記録には、その人(家族)について把握しうる全ての情報が記載されています。当然、人生色々なので、中には壮絶な人生記録も多数あります。
私は担当する全ケースの記録にじっくり目を通し、個々人を理解するように努めていました。「それにしても、この人達の人生は濃い!」。当時23歳でしたが、色々な人生があるということを知りました。
このケース記録には、書き手の性格も反映されます。字が汚い(当時は手書き)、感情むき出しに書く・淡々と書く、内容が濃い・薄いなど、担当が変わると違いが出て面白かったです。 上司は大変そうでした。係長は係員7~8名の記録に目を通して、重要案件の確認、数値ミスや誤字脱字がないかチェックします。課長はさらに全係の記録に目を通すことになるので、毎日決裁箱には山積みのファイルがありました。
■ケース記録を通じて磨かれる能力
最後にケース記録を通じて磨かれる能力についてお話しします。
〇メモ・記録をつける習慣ができる
ケース記録は全て事実に基づいて記載するため、面接や家庭訪問調査時に聞き取った内容についてメモを取る習慣ができます。
〇文章構成力が鍛えられる
「5W・1H(いつ・どこで・だれが・なにを・なぜ・どうやって)」をはじめ、要点をまとめ分かりやすく伝える文章力が磨かれます。
〇個人情報の意識が高まる
これ以上ない個人情報を取り扱うため、個人情報に対する意識を高められます。
おこぼれ話ですが、私の妻も公務員で、私がケースワークした職場に異動することになり、何と私が担当していた地域を受け持つことがありました。自分では冷静に簡潔に書いているつもりでしたが、「あんたの記録、随分感情がコモっているわね」とお𠮟りを受けました。
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