観光案内所設立プロジェクト~公務員なのにこんな仕事するの?~

その他

(その14「運営事業者の選定」)

 工事契約も無事に完了し、最後に残った大きな契約は運営事業者の選定である。当案内所では365日年中無休で稼働、英・中・韓国語の多言語対応、インバウンド観光客を想定した和文化体験事業など、様々な業務が行われる。運営形態は区と民間事業者との委託契約方式で行うことが決まっている。

 業者の選定方法は、仕様書に基づいた書面・口頭審査によるプロポーザル方式、つまりこちらの要望に対して、一番魅力的な提案をしてきた業者に委託する方法である。今回の契約で怖いのは「不調」であった。先に述べた通り、複雑な業務を行わなければならず、業者側が実行不可能、又は採算が取れないと判断して、誰も手をあげてこないことが危惧された。そこで、募集開始前から運営候補になれそうな事業者に、今回のプロジェクトを話したうえで、提案書を出してほしいといった営業は入念に行っていた。やれることはやった気にはなっていたが、それでも不安を消し去ることはできなかった。もし、「業者が見つからず、駅ビルのグランドオープンに当案内所開業が間に合わなくなる」と考えると、食事も喉を通らないことがあった。

 プロポーザル方式の契約はとにかく担当者が大変である。内容漏れのない仕様書、条件一覧、各種様式の整備、業者対応などやることが満載である。何度も何度も自分の作った書類を読み返し、ようやくホームページに業者提案募集が掲載された。

 3週間の募集期間を得て3社から手が上がった。

A社 誰もが知る大会社で観光案内所運営の実績が豊富にある。

B社 視察に行ったことがある外国人向けの和文化体験を広く手掛けていた。

C社 人材派遣の大手で観光案内所どころか、観光業界にあまり精通はしていないが、多言語対応可能な人材確保を得意としていた。

 業者からの質問期間を終え、各社から書類の提出があった。内容が似通う部分はあったが、各社ともそれぞれカラーを出してきて、書類を読むのは楽しい作業だった。ある程度、予想はしていたが、

A社 さすが大手、企画書類の作成も慣れており、安定感のある内容だった

B社「案内所」としての運営能力に不安があったが、外国人誘客の爆発力が期待できた。

C社 多様な人材と行政の要望に柔軟に対応できることを強みとしていた。

 担当者の優先順位としてはA→B→C社の順番であった。しかし、同僚の女性職員達に見せると、全員C社の提案を好んでおり、驚かされた

 そして迎えたプレゼン審査。

A社 如何にもプレゼンに慣れたエース級の社員がプレゼンに来た。内容は無難であり、何より「まあ、言われたことはやれますよ」という積極性を感じない内容だった。

B社 とにかく和文化体験のスペシャリストであることをプレゼン審査でも前面に押してきていた。これは「案内所」のプレゼンではないなと感じた。

C社  プレゼンは若手の女性職員によって行われた。事前に区を入念に歩いたようで、区の置かれた状況やマニアックな観光スポットなどをプレゼンに織り交ぜていた。

 健気な若い女の子が区を一生懸命調べてプレゼンする頑張る姿に、プレゼン審査員の課長らが落とされたのだろうか。得点を集計した結果、何とダークホースのC社に業者が決定した。プレゼンの内容を見ると、まあ納得できる結果だが、それを見抜いていたような同僚の女性職員の眼力に感服した。

 因みにC社のプレゼンした女性職員は、激務がたたったのか、その後体調を崩し、退職してしまった。後任は髭のおじさんで、がっかりしたが、このおじさんの業務遂行能力が凄まじく高く、この後、案内所運営を力強く・粘り強くけん引してくれた。

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