観光案内所設立プロジェクト~公務員なのにこんな仕事するの?~

その他

その11「地域の声を聴く」

 設計や工事など大きな案件以外にも、決めなければならないことが山ほどある。例えば、案内所の名称やロゴもその一つである。

 ここは不特定多数の方々に情報を提供する場所なので、ロゴはインフォメーションを意味する「i」か「?」になるはずである。ところがいざ調べてみると、その文字が〇で囲まれていたり、いなかったり、青・赤など色が統一されていないなど、特に決まり事がないことが分かった。また英語名称についても「information corner」・「information center」・「visitor center」と数々の選択肢がある。日本語は「観光案内所」・「観光情報センター」など異なる名称が乱立していた。

 私は何でもいいと思っていたが、現実はそうはいかない。やはり何らかの根拠が必要である。そのため、日本政府観光局や自治体のホームページを手あたり次第確認して、一定の法則性を見出し、ようやく名称を固めた。

 案内所の名称(案)や別件で、再度区長室に行くことになった。名称は難なくOKをもらったが、区長がただの思い付きだとは思うが、「この規模の案内所なら、もっと民間の知恵を借りて運営したほうがいいと思うよ。また、地元の声も大切だよね」とつぶやいた。この時、課長がとっさに「民間の識者を含め、地元の方々の意見を聞く会議体を設けたいと思います」と言ってしまった。

 周りの意見を聴くことはもちろん大切ではあるが、「区の事業なんだから自分のことは自分で決めろよ」と心の中でつぶやいた。そして、業務量がまた増えることになったと頭を抱えた。観光案内所の運営について助言できる民間の識者など存在するのだろうか。地域の人の声とは何なんだよ?

 課長も責任を感じてか、これに関して色々と手を貸してくれた。民間の識者については、観光業者からA氏を紹介してもらった。A氏は地方でインバウンド向けの体験事業で成功しているやり手である。A氏が都内で主催するセミナーに出席して、その後の懇親会の場で口説いて了解してもらった。地域の声については、毎度おなじみではあるが、近隣の町会長、商店会長等の方々にご参加いただくことにした。多忙を極めるこれらの方々に、足を運んでもらうのは大変忍びない。

 区の事業では、このような会合が非常に多い。町会長は、これだけでなくまちづくりや産業振興、地域のイベント、防災対策等で区関連の事業で色々とお呼ばれしているだろう。地元に配慮することはもちろん大切である。特にまちづくりや防災・防犯対策は地元との連携が必須となる。しかし、観光振興でそれが必要だろうか。自分たちで調査して、仮説を立て、複数案考えて、関係者を説得させるプレゼン力が中々育たないのは、こういったことも背景にあると思う。

 私は未熟であったため、これらの根回しをいつもまどろっこしく思っていた。実際に民間企業で何らかの企画を通すなら、関係者の調整は大変なものになるだろう。結論から言うと、この会議は数回開催されたが、機能することはなかった

 それでも理事長を務めてくれたA氏は人格者で、区の観光についても非公式ながら色々とアドバイスをくれた。かつては外資系企業のマーケティング部門で活躍していたとのことであった。区長のアドバイスはある意味正しかったのかもしれない。問題は貴重な資源を生かせない我々の能力不足なのであろうか。A氏の卓越した能力と機能しない会議を見て、そんなことを考えていた。

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